スマイラフ投与中の確認事項
特に注意すべき症状
本剤による副作用の重篤化を防ぐために、患者の状態の変化には十分注意してください。また、自覚症状が発現した際には、速やかに主治医に相談するよう説明してください。
- 重篤な感染症(結核、肺炎、敗血症等)、好中球減少・リンパ球減少
- 発熱、咳、のどの痛み、寒気などの症状が続く、など
- 帯状疱疹
- 痛みを伴う発疹や水疱、しびれ、など
- 消化管穿孔
- 激しい腹痛、腹痛が続く、など
- ヘモグロビン減少
- 息切れ、めまい、など
- 肝機能障害
- 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、など
- 間質性肺炎
- 発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状
- 静脈血栓塞栓症
- ふくらはぎの色の変化・痛み・腫れ、急な息苦しさ、胸の痛み、など
- 横紋筋融解症、ミオパチー
- 手足や全身の筋肉痛、しびれ、尿の色が赤褐色になる、など
投与中の検査項目
本剤投与中は、適切な検査と処置を実施してください。
胸部画像検査(レントゲン検査、CT検査)
結核の既往歴のある患者及び結核感染が疑われる患者は、胸部レントゲン検査を定期的に行うなど、結核の発現に十分注意してください。なお、結核の活動性が確認された場合は本剤を投与しないでください。活動性結核に対しては、本剤投与は禁忌です。
結核のほか、間質性肺炎の発現に注意してください。
血球数(好中球、リンパ球、ヘモグロビン値)
定期的に好中球数、リンパ球数、ヘモグロビン値を確認してください。
- 好中球数:好中球数が継続して500~1000/mm3の場合は、1000/mm3を超えるまで本剤の投与を中断してください。また、好中球数が500/mm3未満では、本剤投与は禁忌です。
- リンパ球数:リンパ球数が500/mm3未満になった場合は、500/mm3以上になるまで本剤の投与を中止してください。リンパ球数が500/mm3未満では、本剤投与は禁忌です。
- ヘモグロビン値:8g/dL未満になった場合は、正常化するまで本剤の投与を中止してください。ヘモグロビン値8g/dL未満では、本剤投与は禁忌です。
脂質検査
定期的に脂質検査値を確認してください。臨床上必要と認められた場合には、脂質異常症治療薬の投与等の適切な処置を考慮してください。
肝機能検査
トランスアミナーゼ(AST、ALT)上昇に注意するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行ってください。
B型肝炎ウイルス検査
B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者に対しては、本剤投与後、肝機能(AST、ALT)検査値や肝炎ウイルスマーカー(HBV DNA定量)のモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意してください。
- HBV DNA定量検査、AST、ALTの測定を1~3ヵ月に1回実施してください。
- HBV DNAが20 IU/mL(1.3 LogIU/mL)以上になった場合は肝臓専門医に相談してください。
クレアチンホスホキナーゼ
血中クレアチンホスホキナーゼの値を確認し、筋障害の発現に注意してください。
その他の注意事項
静脈血栓塞栓症
静脈血栓塞栓症のリスク因子として、高齢、肥満、静脈血栓塞栓症・手術・外傷・下肢ギプス包帯固定等の既往歴などが報告されています1)。これらのリスク因子を有する患者に本剤を投与する場合は、観察を十分に行いながら、慎重に投与してください。
下肢の色調変化・疼痛・腫脹、突然の呼吸困難、胸痛等、静脈血栓塞栓症を疑う症状が認められた場合には本剤の投与を中止し、適切な処置を行ってください。
1)日本循環器学会:肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)
悪性腫瘍
本剤との因果関係は明らかではありませんが、悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍が報告されています。本剤投与中は悪性腫瘍の徴候に注意し、必要に応じて画像検査及び血液検査等を行ってください。
他剤の市販後臨床試験結果
本剤の類薬であるトファシチニブクエン酸塩について、心血管系事象のリスク因子を有する関節リウマチ患者を対象とした海外臨床試験の結果が報告されています。主要評価項目である主要な悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率におけるTNF阻害剤群に対するハザード比(95%信頼区間)は1.48(1.04, 2.09)であり、95%信頼区間上限が予め設定していた非劣性マージン1.8を超え、TNF阻害剤群に対する非劣性が検証されませんでした。
心血管系事象
虚血性心疾患の発現にご注意ください。虚血性心疾患のリスク因子として脂質異常症が知られており、本剤投与中に脂質検査値異常が報告されています。本剤投与中は定期的に脂質検査値を確認し、脂質検査値異常の発現に注意してください。
他剤の市販後臨床試験結果
本剤の類薬であるトファシチニブクエン酸塩について、心血管系事象のリスク因子を有する関節リウマチ患者を対象とした海外臨床試験の結果が報告されています。主要評価項目である主要な心血管系事象(Major Adverse Cardiovascular Events:MACE)の発現率におけるTNF阻害剤群に対するハザード比(95%信頼区間)は1.33(0.91, 1.94)であり、95%信頼区間上限が予め設定していた非劣性マージン1.8を超え、TNF阻害剤群に対する非劣性が検証されませんでした。
横紋筋融解症、ミオパチー
本剤投与中に、筋障害に関連する有害事象として、血中クレアチンホスホキナーゼ増加が報告されています。本剤投与中は、血中クレアチンホスホキナーゼの値を確認し、筋障害の発現に注意してください。
妊娠、授乳に関する注意事項
妊婦
妊娠又は妊娠している可能性のある女性への本剤の投与は禁忌です。
また、妊娠可能な女性に本剤を投与する場合は、投与中及び投与終了後、少なくとも1月経周期は適切な避妊を行うよう指導してください。
ご家族も含め今後の妊娠の計画や治療について理解いただき、妊娠を希望される場合は、あらかじめ主治医に相談するよう指導してください。
授乳
本剤投与中は授乳しないことが望ましいです。
注意すべき事象とその対策
重篤な感染症(結核、肺炎、ニューモシスチス肺炎、敗血症、日和見感染症を含む)
■注意事項
- 本剤は免疫抑制作用を有する薬剤であることから、結核、帯状疱疹、肺炎(ニューモシスチス肺炎等を含む)、敗血症、日和見感染症等の重篤な感染症があらわれることがあります。
- 本剤の投与に際しては十分な観察を行い、感染症の発現や増悪に注意してください。本剤投与中に重篤な感染症を発現した場合は、速やかに適切な処置を行い、感染症がコントロールできるようになるまでは投与を中止してください。
- 発熱、倦怠感等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう指導してください。
- 本剤投与中に結核の活動性が確認された場合は本剤の投与を中止してください。
- 結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)及び結核感染が疑われる患者では、結核を活動化させるおそれがあるので、胸部レントゲン検査等を定期的に行うなど、結核症状の発現に十分注意してください。
- 高齢者では重篤な感染症の発現率の上昇が認められています。一般に、高齢者では生理機能が低下しているので用量に留意して、患者の状態を観察しながら慎重に投与してください。
- 呼吸器感染症予防のために、インフルエンザワクチンは可能な限り接種し、65歳以上の高齢者には肺炎球菌ワクチンの接種も積極的に考慮してください。
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における重篤な感染症の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで2.8(1.3, 5.9)/100人・年、150mgで3.2(1.6, 6.3)/100人・年、本剤合計†で2.9(1.9, 4.6)/100人・年でした。
- 第Ⅲ相試験における本剤投与例のうち、重篤な感染症が100mgで278例中7例(2.5%)、150mgで276例中8例(2.9%)認められました。そのうち、肺炎が100mgで3例(1.1%)、150mgで2例(0.7%)と最も多く認められました。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、2.5(1.9, 3.2)/100人・年でした。また、時期別の発現率は、60ヵ月まで0.7~4.2/100人・年の範囲で推移しました。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
重篤な感染症の発現時期別の発現率:第II/III相試験併合†解析(安全性解析対象集団)
- †:本剤投与全例(プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む)
[参考] 生物学的製剤、JAK阻害薬投与中における発熱、咳、呼吸困難に対するフローチャート
日本リウマチ学会:全例市販後調査のためのペフィシチニブ適正使用ガイド(2022年10月23日改訂版)
https://www.ryumachi-jp.com/publish/guide/guideline_peficitinib/( 最終アクセス日:2023年7月4日)
https://www.ryumachi-jp.com/info/peficitinib_c.pdf( 最終アクセス日:2023年7月4日)
帯状疱疹
■注意事項
- ヘルペスウイルスを含むウイルスの再活性化(帯状疱疹等)が報告されています。ヘルペスウイルス等の再活性化の徴候や症状の発現に注意してください。徴候や症状の発現が認められた場合には、患者に受診するよう説明し、本剤の投与を中断し、速やかに適切な処置を行ってください。
- あらかじめ患者に帯状疱疹の主な初期症状を説明し、症状が認められた場合は速やかに受診するよう指導してください。
<有害事象>
- 第Ⅲ相試験併合解析(全期間)*における帯状疱疹関連事象(帯状疱疹及び水痘を含む)の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで7.4(4.7, 11.8)/100人・年、150mgで4.0(2.1, 7.4)/100人・年、本剤合計†で5.7(4.2, 7.9)/100人・年でした。
- 第Ⅲ相試験における本剤投与例のうち、帯状疱疹が100mgで278例中17例(6.1%)、150mgで276例中10例(3.6%)、水痘が100mgで1例(0.4%)認められました。
- 第Ⅱ/Ⅲ相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、6.5(5.5, 7.7)/100人・年でした。また、時期別の発現率は、60ヵ月まで3.7~8.7/100人・年の範囲で推移しました。
- 第Ⅱ/Ⅲ相試験併合解析*のサブグループ解析では、本剤投与全例†における年齢別の発現率は65歳以上の患者集団で11.2(8.5, 14.7)/100人・年、65歳未満の患者集団で5.3(4.3, 6.5)/100人・年でした。
- 白人を中心に構成された海外第Ⅱ相試験併合解析(CL-RA21/CL-RA22/CL-RA25)*の本剤投与全例†における発現率(95%信頼区間)は1.4(0.9, 2.4)/100人・年でした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
海外後期第Ⅱ相試験(CL-RA21)(海外データ)
- 対象:メトトレキサートで効果不十分な18歳以上の関節リウマチ患者(379例)
- 方法:メトトレキサート併用下で本剤25、50、100、150mg又はプラセボを1日1回食後に経口投与し、本剤の有効性・安全性・薬物動態・薬力学を検討。後期第Ⅱ相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験。
海外後期第Ⅱ相試験(CL-RA22)(海外データ)
- 対象:DMARDで効果不十分な18歳以上の関節リウマチ患者(289例)
- 方法:本剤25、50、100、150mg又はプラセボを1日1回食後に経口投与し、本剤の有効性・安全性・薬物動態・薬力学を検討。後期第Ⅱ相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験。
海外継続投与試験(CL-RA25)(海外データ)
- 対象:CL-RA21、CL-RA22を完了した関節リウマチ患者(611例)
- 方法:本剤100mgを1日1回食後に経口投与し、本剤の有効性・安全性を検討。第Ⅱ相非盲検継続投与試験。なお、事前に規定した有害事象又は臨床検査異常発現時には、本剤50mgへの減量を可能とした。
承認された用法及び用量
通常、成人にはペフィシチニブとして150mgを1日1回食後に経口投与する。なお、患者の状態に応じて100mgを1日1回投与できる。
用法及び用量に関連する注意(一部抜粋)
- 7.1 中等度の肝機能障害を有する患者に投与する場合には、本剤の有効性及び安全性を十分に理解し、本剤投与の必要性を慎重に検討した上で、本剤50mg1日1回投与とすること。なお、十分な治療反応が得られない場合は、本剤の投与継続の必要性を検討すること。[電子添文2.3、9.3.1-9.3.3、10.2、11.1.4、16.6.2、17.1.1-17.1.3参照]
帯状疱疹関連事象の発現時期別の発現率:第Ⅱ/Ⅲ相試験併合†解析(安全性解析対象集団)
- †:本剤投与全例(プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む)
好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン減少
■注意事項
- 本剤投与中は定期的に血液検査を行い、以下の基準を参考に、適切に対応してください。
- 【好中球数】
- <投与開始前>
好中球数が500/mm3未満の場合は投与しない。
好中球数が1000/mm3未満の場合は投与しないことが望ましい。 - <投与開始後>
好中球数が継続して500~1000/mm3の場合には1000/mm3を超えるまで投与を中断。
- 【リンパ球数】
- <投与開始前>
リンパ球数が500/mm3未満の場合は投与しない。 - <投与開始後>
リンパ球数が500/mm3未満になった場合は、500/mm3以上になるまで投与を中止。
- 【ヘモグロビン値】
- <投与開始前>
ヘモグロビン値が8g/dL未満の場合は投与しない。 - <投与開始後>
ヘモグロビン値が8g/dL未満になった場合には正常化するまで投与を中止。
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における好中球減少症及びリンパ球減少症に関連する有害事象の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで8.3(5.3, 12.9)/100人・年、150mgで5.2(3.0, 8.9)/100人・年、本剤合計†で6.4(4.7, 8.7)/100人・年でした。
- 第Ⅲ相試験における本剤投与例のうち、リンパ球数減少が100mgで278例中13例(4.7%)、150mgで276例中8例(2.9%)と最も多く認められました。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、3.7(3.0, 4.6)/100人・年でした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
<好中球数の推移>
本剤投与後、好中球数(平均値)は以下の通りに推移しました。
好中球数の推移:第III相試験(CL-RAJ3)(全期間)(安全性解析対象集団)
- *:プラセボ群に割り付けられた患者全体の推移
- †:52週又は中止時
好中球数の推移:第III相試験(CL-RAJ4)(全期間)(安全性解析対象集団)
- *:プラセボ群に割り付けられた患者全体の推移
- †:52週又は中止時
<リンパ球数の推移>
本剤投与後、リンパ球数(平均値)は以下の通りに推移しました。
リンパ球数の推移:第III相試験(CL-RAJ3)(全期間)(安全性解析対象集団)
- *:プラセボ群に割り付けられた患者全体の推移
- †:52週又は中止時
リンパ球数の推移:第III相試験(CL-RAJ4)(全期間)(安全性解析対象集団)
- *:プラセボ群に割り付けられた患者全体の推移
- †:52週又は中止時
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における貧血に関連する有害事象の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで2.0(0.8, 4.8)/100人・年、150mgで1.6(0.6, 4.2)/100人・年、本剤合計†で1.7(0.9, 3.0)/100人・年でした。
- 第III相試験における本剤投与例のうち、貧血が100mgで278例中5例(1.8%)、150mgで276例中3例(1.1%)、ヘモグロビン減少が150mgで1例(0.4%)認められました。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、1.1(0.8, 1.7)/100人・年でした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
<ヘモグロビン値の推移>
本剤投与後、ヘモグロビン値(平均値)は以下の通りに推移しました。
また、貧血に関連する有害事象が認められていることから、ヘモグロビン減少について検討したところ、実測値8.0g/dL未満又はベースラインからの変化量が2g/dL超減少した患者の割合は、第III相試験(CL-RAJ3、CL-RAJ4、全期間)の100mgで0.6~4.8%、150mgで1.7~4.6%、継続投与試験(CL-RAJ2、全期間)で1.1~5.7%でした。
ヘモグロビン値の推移:第Ⅲ相試験(CL-RAJ3)(安全性解析対象集団)
- *:プラセボ群に割り付けられた患者全体の推移
- †:52週又は中止時
ヘモグロビン値の推移:第Ⅲ相試験(CL-RAJ4)(安全性解析対象集団)
- *:プラセボ群に割り付けられた患者全体の推移
- †:52週又は中止時
消化管穿孔
■注意事項
- 激しい腹痛や、持続性の腹痛等の症状が認められ、消化管穿孔が疑われる場合には、主治医に連絡するよう指導してください。
- 本剤投与中に異常が認められた場合には投与を中止するとともに、腹部レントゲン、CT等の検査を実施するなど十分に観察し、適切な処置を行ってください。
- リウマチ患者において腸管憩室の存在に伴う憩室炎の合併は消化管穿孔の強いリスク因子であることが報告されています1)。腸管憩室を有する患者に本剤を投与する場合は、慎重に行ってください。
- 消化管穿孔のリスク因子であるステロイド又はNSAIDs1)を使用している患者に本剤を投与する場合も、慎重に行ってください。
1)Curtis JR et al.: Arthritis Rheum 2011; 63(2):346-351
<有害事象>
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での消化管穿孔に関連する有害事象の発現率(95%信頼区間)は、0.2(0.1, 0.5)/100人・年でした。
- 消化管穿孔に関連する有害事象が認められた3例(継続投与試験、CL-RAJ2)は、治験参加前からNSAIDsを長期間服用していました。また、1例はステロイドも併用していました。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
間質性肺炎
■注意事項
- 発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部レントゲン検査、胸部CT検査及び血液ガス検査等を実施し、本剤の投与を中止するとともにニューモシスチス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)を考慮に入れ適切な処置を行ってください。
- 間質性肺炎の既往歴のある患者には、定期的に問診を行うなど、注意してください。
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における間質性肺疾患に関連する有害事象の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで0.4(0.1, 2.8)/100人・年、150mgで0.0/100人・年、本剤合計†で0.5(0.1, 1.4)/100人・年でした。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、0.3(0.1, 0.6)/100人・年でした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
B型肝炎ウイルスの再活性化
■注意事項
- 生物学的製剤やJAK阻害剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されています。
- B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意してください。
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*におけるウイルス再活性化(帯状疱疹を除く)に関連する有害事象の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mg、150mgともに0.0/100人・年、本剤合計†で0.3(0.1, 1.2)/100人・年でした。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、0.1(0.0, 0.4)/100人・年でした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
肝機能障害
■注意事項
- 本剤投与中に肝機能障害があらわれることがあるため、本剤投与開始後はトランスアミナーゼ上昇に注意するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行ってください。
- 本剤とメトトレキサート併用投与により、肝機能障害の発現率上昇が認められています。肝機能障害を起こす可能性のある薬剤との併用時には観察を十分に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行ってください。
- 倦怠感、発熱などの全身症状、食欲不振、嘔気、嘔吐などの消化器症状、発疹、黄疸などの皮膚症状が認められた場合には、主治医に連絡するよう、指導してください。
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における肝機能障害に関連する有害事象の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで11.4(7.8, 16.7)/100人・年、150mgで18.7(13.9, 25.2)/100人・年、本剤合計†で14.8(12.1, 18.2)/100人・年でした。
- 第III相試験における本剤投与例のうち、肝機能異常が100mgで278例中14例(5.0%)、150mgで276例中20例(7.2%)と最も多く認められました。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、7.3(6.2, 8.5)/100人・年でした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
本剤合計†における肝機能障害に関連する有害事象の曝露量あたりの発現率のサブグループ解析:第III相試験併合解析(全期間)(安全性解析対象集団)
サブグループ因子 | 曝露量 (人・年) |
発現例数 | 100人・年あたりの 発現率(95%信頼区間) |
|
---|---|---|---|---|
体重 | 40.0kg以下 | 18.4 | 0 | 0.0 |
40.0kg超~60.0kg | 363.4 | 42 | 11.6(8.5, 15.6) | |
60.0kg超~80.0kg | 198.0 | 35 | 17.7(12.7, 24.6) | |
80.0kg超 | 32.3 | 14 | 43.4(25.7, 73.3) | |
メトトレキサート併用 (開始時) |
併用あり | 512.0 | 84 | 16.4(13.2, 20.3) |
併用なし | 100.8 | 7 | 6.9(3.3, 14.6) | |
メトトレキサート用量 (開始時、1週間あたり) |
0mg超~8mg | 205.0 | 27 | 13.2(9.0, 19.2) |
8mg超~12mg | 223.8 | 35 | 15.6(11.2, 21.8) | |
12mg超 | 83.3 | 22 | 26.4(17.4, 40.1) |
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
静脈血栓塞栓症
■注意事項
- 肺塞栓症、深部静脈血栓症等の静脈血栓塞栓症の発現が報告されています。
- 静脈血栓塞栓症のリスク因子として、手術、外傷、ギプス固定歴、経口避妊薬の服用、ホルモン補充療法などが報告されています1)。 これらのリスク因子を有する患者に本剤を投与する場合は、観察を十分に行いながら、慎重に投与してください。
- 下肢の色調変化・疼痛・腫脹、突然の呼吸困難、胸痛等、静脈血栓塞栓症を疑う症状が認められた場合には本剤の投与を中止し、適切な処置を行ってください。
1)日本循環器学会:肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)
<有害事象>
- 第Ⅱ/Ⅲ相試験併合(海外第Ⅱ相試験を含む)において、静脈の塞栓および血栓に関連する有害事象は6例に認められ、発現率(95%信頼区間)は0.2(0.1,0.4)/100人・年でした。
- 継続投与試験(CL-RAJ2)の最終結果報告の解析では、全期間における発現率(95%信頼区間)は0.1(0.0,0.4)/100人・年でした2)。
- 2023年7月31日までに市販後において静脈血栓塞栓症(疑い例含む)が12例報告され、そのうち本剤との因果関係が否定できない症例も認められました。
- 2)Takeuchi T et al.: Rheumatol Ther 2021; 8(1): 425-442
本試験は、国際共同継続投与試験[CL-RAJ2]の最終報告である。
本試験は、アステラス製薬株式会社の資金提供により実施されました。
悪性腫瘍
■注意事項
- 本剤との因果関係は明らかではありませんが、悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍の発現が報告されています。悪性腫瘍の発現に注意してください。
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで1.2(0.4, 3.7)/100人・年、150mgで0.0/100人・年、本剤合計†で0.6(0.2, 1.6)/100人・年でした。
- 第II/III相試験併合解析における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、0.9(0.6, 1.3)/100人・年でした。また、時期別の発現率は、60ヵ月まで0.0~2.0/100人・年の範囲で推移しました。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現時期別の発現率:第II/III相試験併合†解析(安全性解析対象集団)
- †:本剤投与全例(プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む)
心血管系事象
■注意事項
- 本剤投与開始後は、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール及びトリグリセリドの上昇等の脂質検査値異常があらわれることがあります。脂質異常症は虚血性心疾患のリスク因子として知られているため、本剤投与中は、脂質検査値異常の発現に注意してください。
- 本剤投与開始後は定期的に脂質検査値を確認し、臨床上必要と認められた場合には、脂質異常症治療薬の投与等の適切な処置を考慮してください。
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における心・脳血管系の有害事象の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mg、150mgともに 0.4(0.1, 2.8)/100人・年、本剤合計†で0.3(0.1, 1.2)/100人・年でした。なお、第III相試験併合解析(全期間)*において心血管系事象の発現は認められませんでした。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、0.5(0.3, 0.9)/100人・年でした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における脂質異常症に関連する有害事象の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで5.8(3.4, 9.7)/100人・年、150mgで9.8(6.6, 14.7)/100人・年、本剤合計†で8.5(6.5, 11.1)/100人・年でした。
- 第III相試験における本剤投与例のうち、脂質異常症が100mgで278例中7例(2.5%)、150mgで276例中 5例(1.8%)と最も多く認められました。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は、5.6(4.6, 6.7)/100人・年でした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
横紋筋融解症、ミオパチー
■注意事項
- 本剤投与中に、筋障害に関連する有害事象として、血中クレアチンホスホキナーゼ増加があらわれることがあります。血中クレアチンホスホキナーゼ増加に注意してください。
- 手足や全身の筋肉痛、しびれ、尿の色が赤褐色になる、などの横紋筋融解症やミオパチーが疑われる症状の発現に注意してください。
<有害事象>
- 第III相試験併合解析(全期間)*における筋障害に関連する有害事象の発現率(95%信頼区間)は、本剤100mgで13.1(9.2, 18.7)/100人・年、150mgで15.7(11.4, 21.6)/100人・年、本剤合計†で14.5(11.8, 17.8)/100人・年でした。
- 第III相試験における本剤投与例のうち、血中クレアチンホスホキナーゼ増加が100mgで278例中20例(7.2%)、150mgで276例中31例(11.2%)と最も多く認められました。
- 第II/III相試験併合解析*における本剤投与全例†での発現率(95%信頼区間)は8.5(7.3, 9.9)/100人・年でした。なお、第Ⅱ/Ⅲ相試験併合*を通じて横紋筋融解症及びミオパチーの発現は認められませんでした。
- *:本剤の臨床的安全性解析では、各試験の安全性データ及び併合した安全性データを使用
- †:プラセボ投与から本剤投与へ切り替えた後の発現を含む
<クレアチンホスホキナーゼの推移>
本剤投与後、クレアチンホスホキナーゼ(平均値)は以下の通りに推移しました。
クレアチンホスホキナーゼの推移:第III相試験(CL-RAJ3)(安全性解析対象集団)
- *:プラセボ群に割り付けられた患者全体の推移
- †:52週又は中止時
クレアチンホスホキナーゼの推移:第III相試験(CL-RAJ4)(安全性解析対象集団)
- *:プラセボ群に割り付けられた患者全体の推移
- †:52週又は中止時